ワールドトリガーに学ぶ「ふりかえり」
ワールドトリガー1ではチーム同士が戦いランクを競う模擬戦という仕組みがあります。オペレーターが試合を実況し、経験豊富な隊員が解説していきます。また試合が終わった後にはビデオを見ながらふりかえりを実施します。
今回はそのふりかえりがめちゃくちゃ素晴らしいのでいくつか素晴らしいと思う点を紹介をしたいと思います。
事実ベースをもとにふりかえる
試合後すぐにビデオを見て、実際の行動を把握していきます。またそのときの状況における複数の選択肢やその判断が適切だったかを確認します。またリアルタイムで見ていたときには気付かなかったターニングポイントなどもチェックします。
ソフトウェアの開発の場合も一回事実を整理した方が良いふりかえりができます。特にスプリント期間が長い場合はスプリント初期に何があったかを忘れてしまっていることが多いです。KPTやYWTの場合も最初に事実整理をする時間を作ると良いふりかえりになると思います。
時系列にそって事実整理したり、感情を表したりするタイムライン2というふりかえり手法もあるので参考にしてみてください。
ファシリテーターの質問力
実況はオペレータが務めますが、このオペレータのファシリテーションが超優秀なのです。解説者は経験が豊富なので、その経験を引き出すような巧みな質問をします。例えばC級のみんなが考えそうなことを敢えてA級隊員にぶつけることで、上位ランカーがどういう風に考えているかを引き出していきます。
開発のふりかえりでも同じように有識者と上手く対話をすることで、有識者の考えや判断の根拠となった過去の経験などを引き出すことができます。それをチームとして共有できるとより一層チーム力が上がっていきます。
新しい技術の紹介
各チーム、各隊員は新しい戦いのスタイルや新技を使います。ふりかえりではこれらを理論立てて推測することがあります。もちろん不公平にならないようにシーズン終盤などに種明かしをするようです。
シーズン終盤だとしても技の種明かしは一見各チームの強みを取り上げてしまうように見えます。しかし、その技の対策を考えたり、その技をヒントにした新技が出てくることで他のチームがどんどん成長していきます。ボーダーの真の目的はネイバーとの戦いのために様々なチームの成長が欠かせません。
ソフトウェア開発でも個々が技術を抱えるのではなく、チーム、組織で情報をオープンにしていくことでさらなる成長が見込めます。
参考
ちなみにこれらの実況・解説の仕組みを作ったのは武富桜子(15)。有能すぎる。。。
ワールドトリガーというマンガを知らない人には意味が分からないと思いますが、これを機会に読んでもらえると嬉しいです。
スクラムフェス大阪参加報告②
午前中は北米セッション。
アジャイルでWFHをパワーアップ by ミグズさん
ターゲット社のアジャイルコーチであるミグズさんのプレゼン。
何はさておき全編日本語ってマジですごくないですか??
もともとOpen Office Formatの人気が高まっていたが、Covid-19 によって働き方を変える必要があったとのことです。
ミグズさんのチームはアジャイル的な方法、すなわち実験を繰り返して、問題を少しずつ解決していきます。
またワーキングアグリーメントについて約束をしたとのことです。例えばコアタイムを決めたり、アイスブレイクの時間を会議の最初に必ずとるようにしたり。同僚との絆を深めるために、バーチャル飲み会を実施したりもしたとのことでアメリカでも同じなんだなぁと感心しました。
ミグズさんのプレゼン資料はもともと完成度が高かったけど、自分の方で事前に日本語をチェックしました。 発表聞いててちょっと涙がでました。
裏話ですが、ミグズさんに”美狗頭”という漢字をプレゼントしましたw
世界規模のサーバレスプラットフォームの中の人が語る勝っているところと真似したほうが良さげなところ by 牛尾さん
アメリカに仕事の秘密を盗み?にいった牛尾さんのセッション。
芸人と見まごうくらいの面白さと熱量にグイグイ引き込まれました。。。
自分がグッと来たところは
- 上司がガチで技術分かる。
- 新人でも一人前の人として接することですごいアウトカムを出せる。
- 他人と違う意見を言うときも、「自分の意見は… 」という。もちろん人格否定をしない。
- 気軽に質問して、気軽に断る。
- ネガティブフィードバックを使ってポジティブに回す。
気軽に質問して、気軽に断るは倉貫さんのザッソウに通じるものを感じました。
また日本企業とアメリカ企業の違いはトップまで技術が分かるかどうかというのが肚落ちしました。技術についての説明や説得をする必要がないってめちゃくちゃアドバンテージですよね!!
「自分の意見は…」の部分は本当に分かりみが深いです。個人に対するリスペクトがあるんですね。
牛尾さんのブログの最終回にはそのことが書いてましたので貼っておきます。ペタッ。
simplearchitect.hatenablog.com
コミュニティの足取りとCOVID-19が及ぼす変化 by 由紀さん
SAFeをやっている由紀さんの話。
今回はSAFeの細かい話の中身ではなくチームの話がメインでした。
アジャイルには合う、合わないはどうしたってある。失敗したっていいじゃない、みんなで作り上げていきましょう、という環境、雰囲気を作っていくことが重要とのことです。
後半はCovid-19下での働き方、そしてこれからの働き方の話。逆参勤交代が流行るかも?!
いつか由紀さんに札幌に来てもらって話してもらうんだ!!
まとめ
ミグズさん、牛尾さん、由紀さんから共通して感じたのは"チーム"で働くということです。
お互いに助け合う、みんなでやりましょうというスタイルがとても素敵だなぁと感じました。
たぶんこれは綺麗ごとではなく、その方がいいものができたり、効率が良いからだと思います。
川口さんから北米に一番近いということで紹介されたのですが、自分の中でのチームや働き方を考えるキッカケになりました。 3人とも基調講演をお願いしてもいいくらいのレベルなのでもっと聞きたい欲がムクムクしたのを覚えています。
ちなみに札幌からミネアポリスへの距離は、8,835kmでした(Google Map調べ)。
北海道1周が約2,800kmなので北海道3周分ですね。遠い。
スクラムフェス大阪参加報告①
今日は一日ソワソワ。
日本最大のスクラムのオンラインのイベント。(初めてだからww)
基調講演はアトラクタの”永瀬美穂”さん。
斬新なプレゼンスタイル
まず永瀬さんのプレゼンスタイルが斬新!いままで見たことない。
プレゼン資料を共有するのではなく背景に文字や画像を入れながらプレゼンをしてました。
文字は少なくシンプルで、ほとんどシャベリでカバー。
しかもその背景が黄色ベース、上だけ白色、そうビールの色です。こういう伏線大好きです。
最後のスライドではしっかり泡が溢れてましたよwww
背景をどうやって変えていたか参加者から質問があって、種明かしをしてもらいました。
なんと手動で変えていたとのこと。すごい!!
永瀬さんのプレゼン資料は下記から見ることができます。 miholovesq.hatenablog.com
グッと来たところ
いつものようにグッときたところをまとめておきます。
「うっ」は成長のチャンス。飛び込みなさい。 #scrumosaka
— ネモトノリユキ@ソフトウェアテスト技法練習帳 発売中!! (@nemorine) 2020年6月26日
いい方向か悪い方向か分からないけど、刺激になる何かをぶっこんでみる。 #scrumosaka
— ネモトノリユキ@ソフトウェアテスト技法練習帳 発売中!! (@nemorine) 2020年6月26日
自分の特性と逆の人とバディを組んで立ち向かう。 #scrumosaka
— ネモトノリユキ@ソフトウェアテスト技法練習帳 発売中!! (@nemorine) 2020年6月26日
実験した!
— ネモトノリユキ@ソフトウェアテスト技法練習帳 発売中!! (@nemorine) 2020年6月26日
大暴れした!
革命した!が欲しい#scrumosaka
感想
永瀬さんは実験をする、挑戦をするということを自身の経験を踏まえて伝えてくれました。しかも永瀬さん自身も新しいプレゼンスタイルに挑戦しながら。
一歩踏み出すことをためらっている人に聞いてほしい熱いセッションでした。
自分も最近「うっ」と思うことが多いけど成長のチャンスだと前向きにとらえて挑戦していきたいと思います。
明日の札幌セッションも挑戦のひとつ。頑張りますよー
小学生向けのmiroワーク①
最近、miroが好きで色々触っているんですが、毎回発見があって本当に楽しいですね。
友人の小学校の先生と一緒に社会(歴史)勉強用のmiroワークを作って、まさに今導入してる最中なので簡単に報告します。
ルール:
- 歴史なので"できごと"と"人物"をメインに配置する
- 関連あることを線でつないでいく
- 覚えやすいように画像などを入れる
- 追加の情報は吹き出しでコメントで入れていく
第一回目とのことですが、子供たちもかなり楽しくできたようです。
しかも子供たち自身がルールを作ってどんどん進めていったみたいです。
いやー すごい!!子供の可能性は無限大ですね。
JaSST online Anemone参加報告
今日はJaSST東北で作成した"かんばんリスト"の仕様書を使ってのテスト分析ライブ+OSTでした。
まとめは以下になります。
https://togetter.com/li/1545941
テスト分析ライブ
はるすぷさんとパインさんと猫課長(にしさん)のライブが圧倒的で、技術よりのテストエンジニア、ユーザー指向のテストエンジニア、ファシリテートするマネージャーと3人の絶妙な立ち位置があり、興味深く見せてもらいました。
グッと来たことをメモしておきます。
- 台本のないライブ感がとにかく最高!!
- ソフトウェアの価値に注目して始めたところ
- はるすぷさんが画面のキャプチャーからコードを想像していたところ
- 二人の視点が違いながらもリスペクトがあったところ
- 4スプリントを回して検査と適応を繰り返していたところ
- ぱいんさんが止めるところはしっかり止めて時間を意識していたところ
- テスト分析時にはテストレベルを意識しすぎない(思考の蓋を外す) by にしさん
今回のライブの二人は短時間で十分すごい成果だと思ったのですが、さらによくするためには…ということでゆもとさんと話してみました。
自分が使ってるところをイメージしてみて、「ああ、こう使うんだ」って腹落ちしてからテストを考え出すのがいいと思う。
— Tsuyoshi Yumoto (@yumotsuyo) June 20, 2020
OST
1限目:VSTePよくわかってないから理解したい
02さんのターン。
少しだけVSTePについての説明となんでVSTePっぽいかの自分なりの理由を説明させてもらいました。
今回のライブでは、はるすぷさんとパインさんが対話をしながらマインドマップを作り上げていたところがVSTePのアプローチに近いなと感じました。にしさんからは普通やるよねといわれたけど、そこまでやっている現場は少ないと思います。
2限目:どうやったらファシリテートを上手にできますか?
いそべさんのターン。
声の大きい人あるあるとか、みんながだんまりのときはどうしたらいいんだろうという話をしました。同じようなところで悩みますよね。。。
3限目:仕様書書いた人だけど何か聞きたいことある?
nemorineのターン。
最初は一人もいなかったのですが、はるぷすさんとパインさんとゆもとさんで話始めました。ゆもとさんはいいとこも気になるとこも含めてフィードバックしてて、さすが!!と思いました。
=かんばんリストについて=
もともとかんばんリストは友人のvolpe28vさんが作成していたユーザーがいる本物のWebサービスです。
そういう意味でもテスト対象としてはリアルだったと思います。
また2013年にJaSST東北立ち上げ時にこのサイトをForkして作っていて、今は探索的テストの勉強会などで利用しています。
実行委員のみなさん、参加者の皆さん
楽しかったです!!どうもありがとうございました。
ソフトウェアシンポジウム2020参加報告②
SSといえばWG(ワーキンググループ)というくらいの名物になってます。 昨年のふりかえりのWGに続いて、今年は探索的テストのチャーターについて考えるWGを担当しました。4時間なのでそこそこ長丁場です。
今回は初めてのmiroを使ったオンラインワークでしたが、結論から言うと最高でしたっ!!課金してよかったmiro。
ワーキングに参加してくれた人は7名ですがどこのWGよりも実務に近く、濃いディスカッションができたのではないかと思っています。
ワークの進め方
以下のツールを使って進めました。
- Zoom:音声用
- miro:オンラインホワイトボード
01. 探索的テストの問題点を出す
結構短時間でサクサク付箋を作りました。
よくあるデメリットとして属人化という話も出ましたが、逆に考えると人によって違うことは違うバグを出せるのでメリットにもなるよね~なんて話もでました。
みんなで付箋を見ながらワイワイやるだけでも楽しいですよね。
02. Explore It のチャーターの章を読んで感想を話す
Explore Itの2章をみんなで読んで感想を話しました。読みたかったけど機会がなかったという人がいたので入れて良かったワークでした。 みんなの心に残ったExplore It のワードを書き留めておきます。
- 「探索」はリスクや問題を見つけるだけではなく、新しい要求を発見する機会にもなりえます
- 良いチャーターはインスピレーションの源
- あなたの探索の最終目的は、ステークホルダーにとって意味と価値がある情報を発見すること
- 要求に関するディスカッションは、チャーターの案を作り始める最適な時間のひとつです
03. miro の付箋機能についてのチャーターを考える
チャーター、チャーターと言ってきましたが、具体的なものが欲しいということで、それぞれがmiroの付箋機能についてチャーターを考えてみました。もちろん短時間のワークなので荒いものですが、見事に全員バラバラ!かなり面白い結果となりました。
それぞれのチャーターを見ながら良いとこを出したり、めっちゃ盛り上がりました!!やっぱり具体的にするってことは大事ですねぇ。ただチャーターを書くって言ってるのに、テスト始めちゃう人がいたのはテスターの鏡だと思って眺めてました。
個人的に心に残ったことを書いておきます。
- テスト対象のソフトウェアの価値を最初に話す
- レイヤーの違う人は価値観が違うのでキチンと話す
- 探索的テストを実施する人によってチャーターを書き分ける
- どうふるまうべきかの期待値を書くこともある
なんだかもう少し頑張れば論文になりそうな雰囲気ですw
04. ふりかえり
最後はFDLのふりかえりを実施しました。 自分のふりかえりとしては、、、
- miroを使ったワークの知見を得ることができた
- 他の人のチャーターを見ることができた
- 参加者が楽しくやっていた
ということで、個人的にはかなりチャレンジなワークだったのにも関わらず、参加者に助けられ大成功に終わりました。
参加してくれたみなさん本当にありがとうございました!!
ソフトウェアシンポジウム2020参加報告①
今年もソフトウェアシンポジウムに半分運営側として参加しました。 本当は岩手で実施するはずだったのですが、Covid-19の影響で初のオンライン開催になりました。そのおかげで参加者が増えたのは怪我の功名でしょうか。
QA チームによる顧客要求の抽出・整理を支援する仕組みの構築
speaker 柏倉 直樹 (ディー・エヌ・エー)
カスタマーサービスと設計の間にQAが入って、顧客のクレームから隠れた期待を抽出しているという話です。
ここで面白かったのは一つのクレームについてネガティブ変換とポジティブ変換の2つを実施してそれらを比較しているというところです。クレームっていうのはもっと良くしてほしいという期待の裏返しと捉えて、チーム全体で行動しているのがいいなーと思いました。
例) 不快なワードを含むコメントの削除してほしい
ネガ対策:コメント削除機能の実装
ポジ対策:不快なワードを含むコメントに遭遇しない状態
プロダクトマネージャーが求めるアジャイル開発におけるソフトウェアテストのあり方と品質向上への取り組み
speaker 板東 塁 (リクルートライフスタイル)
開発とQAが分断することなく、一つのチームとして品質のことやテストのことを考えたことで予定通りリリースができ、バグも減ったという報告でした。ここのQAはアウトスプリントQAという形でQAがスプリントの外で動くタイプでした。
いま自分は品質関係のサポートという形で社内のアジャイルチームに関わっていますので参考になることが多かったです。 ただ下記のロジックはちょっと分からなかったので、どこかで聞いてみたいです。
QAメンバーがタイムボックスから外れることで寄り添うの箇所がまだロジカルに繋がってない。
— ネモトノリユキ@ソフトウェアテスト技法練習帳 発売中!! (@nemorine) June 17, 2020
タイトル:コミュニティ型チーム活動の進化 ~ COVID-19 対策サイト開発から学ぶ~
松尾谷 徹 (デバッグ工学研究所)
投稿直前に変更したというCovid-19に関係するディスカッションの司会を務めました。
松尾谷さんからのプレゼンの後、主にOSSコミュニティの仕事の進め方やモチベーションについてディスカッションをしました。
自分の住んでいる北海道も最初からいままでずーーーっとCovid-19と付き合っているため、あまりに興味がありすぎてもう少し話したいと思う内容でした。。。
論文が公開されたらぜひ見てほしいですね。
2日目の午後はワーキンググループを担当したのですが、それは面白すぎたので別エントリにしようと思います。