アジャイルジャパン仙台に参加して②
◇Keynote 2:「柔軟心 (にゅうなんしん) と庭園デザインにおけるユーザーエクスペリエンス」
枡野 俊明(ますの しゅんみょう) 氏
枡野さんが実際にデザインされている庭
枡野さんは住職でありながら、庭園デザイナーでもある。 自分の特技、好きなことを通して社会に貢献できないか?と考え、庭園デザインをやり始めた。 門外漢の自分が話すことでキッカケが生まれるかもしれないということで、お話をしてくれた。パワーポイントを一切使わない講演は久しぶりだった。
挨拶
最初は挨拶から。
声に出して自らの気持ちを表現することはいい。 自分が気持ちよくなるためには相手を気持ちよくさせる。
『禅とデザイン』
長いスパンでの仕事が多く、1つのプロジェクトは平均3年半。最長で8年。
日本人の美意識と世界の動き
日ごろ日本の美しさ、日本人が得意とする美意識。 それを如何に現代にあわせこむか。根底に流れている価値観、美意識は何百年も変わっていない。
近年は物の豊かさ、情報の速さ、量の多さが人を豊かにすると信じられているが、 必ずしもそうではないかもしれない。常に追われていく、執着心が生まれる=それが現実でもある。 一方で、心の豊かさが重要視されてきている。これはワールドワイドな動き。
日本人が昔から持っていた全てのモノに霊性を認めるアミニズムはこれからの世界に必要なものなのかもしれない。
禅と哲学
人間の中には宇宙を持っている。それに出会うのが禅の目指すもの。 考え方は限りなく、哲学に近い。
論理を証明していくのが哲学。 禅は日々に適応していく。すなわち"行(ぎょう)"になる。 "行"を修めるので修行という。 取り組む姿勢が、皆さんの手助けになるはず。
禅ちょっと気になってきたー
枡野さんの仕事の仕方
クライアントの要求の中には言葉にならない奥に潜んでいる部分は必ずあるので、どうやってそれを引き出していくかを考える。
斜面があったとき、西洋は造成して平らにしてから作りこむ。 日本は斜面をどう生かすか?風、光、木の陰がどう変化するのか?。 そしてそれがどのように人に影響を及ぼすかを考える。
地心(じごころ)を限りなく聞き取る+クライアントの要求の両方を聞くことが重要である。クライアントからの要求にこだわり過ぎない=柔軟心。
庭園に配置する石、木も同じ。それらが最大限に引き出せる方法を自分の中の美意識、価値観に基づいて変更する。変化したときは3手、5手、7手先を読む。
作りながら、さらにいいものを作り上げていく。 計画ありきではなく、使う方に一番喜んでもらうもの。
これはまさにアジャイル開発宣言の『計画にしたがうよりも、変化への対応を』に近い考え方だと思う。 石や木を最大限に引き出せる方法というのはチーム作りの考えと同じだと感じた。 ここでテンション上がってしまって、枡野さんの著書「共生(ともいき)のデザイン」を注文してしまった。 共生のデザインには仮組みという概念が書かれていて、これがプロトタイプに近いものであると思った。
完全を越えた不完全の美
妥協をゆるす。 ユーザーの要望に十分応えられているかを確認すること。 機能は同じでも、老人が使うか、子供が使うかで求められるものが違う。
『簡素の美。これ以上そぎ落とせないのが良いデザイン。』
・ヨーロッパは完全な美
・日本は完全を越えた不完全の美
完全性に人間性が入り込む余地を残すのが世代を超えていくデザインであること。 アジャイル→フラジャイルとすることで、日本的なもの作りができるのではないかと。常に移ろうものが世の中の真理である。
簡素の美のデザインについては佐藤可士和さんも同じことを言っていた。 自分はそれまでデザインは足し算だと思っていたので、びっくりした記憶がある。
自分の感想
アジャイル×お坊さんってどんな感じなのか想像もつかなかったセッションだったのだが、終わってみると心に刺さる良い話だった。特に初めて聞いたであろうアジャイルという単語から、フラジャイルへのつなげ方は素晴らしいなぁと思った。